DVD 松竹 2002/02/21 ¥4,935
ひとりの老人(緒形拳)が何者かに殺害され、ふたりの刑事(丹波哲郎、森田健作)が事件を担当し、日本中をかけめぐる。やがて、その事件の影に若き天才作曲家・和賀英良(加藤剛)の存在が浮かび上がっていく。そして和賀は、交響曲『宿命』を作曲し、自らの指揮・ピアノ演奏でそれを披露しようとしていた…。
松本清張の同名ミステリ小説を原作に、松竹の巨匠・野村芳太郎監督が壮大なスケールで映画化したヒューマン社会派サスペンス巨編。ドラマの後半は交響曲『宿命』と日本の四季折々の風景をバックに、事件の謎解きとともに、父と子の逃れられない宿命の絆が浮き彫りにされていき、これでもかと言わんばかりに観客の涙腺を刺激する。
豪華キャストもそれぞれ柄に合った好演をみせてくれているが、特に丹波哲郎の貫禄に満ちた名演は忘れ難い。日本映画が、日本映画だからこそなしえた、日本映画ならではの奇跡のような大傑作。

この映画のすごさを真に理解するためには、過去の日本のハンセン病に対する歴史を理解してないと、ただ見るだけじゃ、事件の核心に触れることはできんだろうし。ちなみに、僕はあまりこれをみるまでハンセン氏病についてよく知ってなかったわけだが、これを見た後、人間ドキュメントやのなんやので、その過去を知るにいたり、この映画を見直したんだよね。中井くんがちょっと前にリメイクしてたっけ、そっちは見ていないけど。日本のおろかな歴史が、名作を生み出すという皮肉。
DVD バンダイビジュアル 2002/02/25 ¥5,040
押井守監督の実写作品『紅い眼鏡』『ケルベロス』にも登場する公安直属特機部隊ケルベロス。その成立過程を背景に、特機所属の青年と彼らと敵対する立場にある都市ゲリラの女性との交流が描かれる、ケルベロスサーガ前史といえる長編アニメーション。
舞台は第2次世界大戦終結十数年後、高度経済成長期にあり、民衆運動と機動隊の衝突が繰り返される昭和の日本。日本現代史の中にケルベロスという架空の組織を滑り込ませることで、フィクショナルでありながらも当時の空気を再現するリアリティを獲得することに成功している。民衆や学生の闘争の時代をくぐり抜けてきた押井守ならではの設定、物語が堪能できる傑作だ。
なお、本作では監督を沖浦啓之に任せ、押井自身は原作と脚本に徹している。
押井の世界は、よっぽど金をかけないと実写ではリアリティを出すことは難しいと思うので、やはりアニメがいいのだと思う。人狼は、押井は監督していないけど、その世界観や作風は紛れもなく押井の系列であり沖浦監督には申し訳ないけど、僕は、確実に押井の作品として見てしまった。そして、押井が監督していたら、さらに硬質なできばえになっていただろうなあとも思った。
それにしても、押井さんは、どの作品でも基本的に同じことを言っている。根っこの部分の作品のメッセージは全部一緒。だけど、僕はそれでいいと思うし、彼の作品はだからこそ魅力があるのだと思う。そのメッセージがどんなものなのかは、押井作品を見ていけば嫌でもわかってくることだから、あえて書かない。
つまり、僕は、好きです。
DVD ジェネオン エンタテインメント 2000/10/25 ¥4,935
日本に陪審員制度があったらという架空の設定を基に、12人の陪審員がある殺人容疑者の判決をめぐって議論を繰り広げるコメディ。監督は『櫻の園』の中原俊。
やっぱりこれは演劇ですなあ。きっと舞台で見たらさらに面白いだろうなあ。最初、日本には陪審員制度はないのに〜って、引っかかってたんだけど、あ、なるほど、もし陪審員制度があったらって設定だったんだねえ。当たり前か。
少うし、弾けすぎてる気がしなくもない、しから、少々こじつけみたいに感じる部分もあるけど、楽しかったからいいや。
VHS ポニーキャニオン 1992/06/19 ¥3,568
大人気の織田裕二をはじめ、若手人気俳優を配しトレンディドラマのフジが贈る大ヒット青春映画!
今、我輩の就職戦線は離脱気味である。なんだこのハチャメチャ映画は。なんかこういった感じのが他にもあったな。海外に行って歌手デビューしちゃうやつ。あれも織田裕二だったっけ?
人間ってないものねだりだから、貧しかった頃は、経済的に豊かになることが、夢になり、豊かになりすぎた今は、貧しいものに、郷愁を感じ、戻ろうとする。だから、中庸が一番。映画とは関係ないけど。つまり昔の人は、生活を楽にとか、経済的に豊かになるという夢で集約されていたから、仕事にがんばった。今の人は、経済的にみたされちゃったから、夢を経済的豊かさ以外のものに求めなきゃならなくなった。それが心の豊かさだとすれば、それは、経済的な豊かさのように統一的な価値観とはならず、千差万別。労働の道をたどれば豊かさに繋がるだろうという認識は懐疑的になり、自分はなぜ働いているのだ?と思い。他の道を歩み、経済的な豊かさ以外の豊かさを夢としだしたのだった。
DVD 角川エンタテインメント 2005/04/08 ¥4,935
平凡な中年サラリーマンの杉山(役所広司)は、通勤電車のホームから見かけた社交ダンス教室の美女・舞(草刈民代)に魅せられ、ダンスを習うことに。やがて彼は舞目当てではなく、本気でダンスに取り組むようになり、また舞もひたむきな杉山の姿から、見失っていた自分自身を取り戻すようになるが……。
周防正行監督が、社交ダンスの世界を舞台に描くハートウォーミングな大人のラブコメディー映画。時流からずれた世界をコミカルに、しかし愛情を込めて描く周防監督のテイストは本作によって完全に確立されたとみて思しい。主演ふたりの好演はもちろんのこと、竹中直人ら脇を固める面々の魅力を個性豊かに捉えているのも、この監督ならではの長所である。
この映画のあと、ヒロインと監督はお付き合いをして結婚いたしました。映画も海外で大変好評を博しました。そして、最初あまり好きではなかった僕も何度かみるうちにものすごく好きな映画になってしまいました。周防監督の日常の仕草を映画的にデフォルメした演出が、最初は大袈裟に感じたのだけど、そのうちくせになっていくんですね。ラストダンスは私と、だっけ?いい歌だよね。
竹中直人が最高です。人生に生きがいを。
ということで、リメイクがみたいです。
VHS 角川エンタテインメント 1995/09/08 ¥15,540
足を潰し役者としての道を断たれた青年が、反骨の版元・芦屋重三郎(フランキー)に見出され写楽(真田)として売り出される。だが、彼の才能に嫉妬した歌麿(佐野)は、写楽と花魁・花里(葉月)の駆け落ちを画策する・・・。歌舞伎界。浮世絵界、遊郭のリアル再現と、多彩な人間像が織り成す江戸絵巻。企画総指揮は写楽研究家としても知られるフランキー堺。
僕歴代邦画俳優の中で5本の指に入るだろうと思っているフランキー堺の総指揮のもと作られた、写楽の顛末。なんだか後半辺りからいまいち気に食わんようになってきて、尻切れとんぼみたいな感じになった。江戸を出るとほんとに一気に閑散とした風景になるんだね。
DVD エスピーオー 2001/11/23 ¥5,040
時は1938年、満州とモスクワをつなぐシベリア鉄道を走る列車内で起きる連続殺人事件に、たまたま列車にいあわせた陸軍大将・山下泰文が、真相を解くべく推理を開始していく…。
映画評論家・水野晴郎が監督・主演を務めたミステリ映画…なのだが、陳腐極まりないドラマ展開、とても走っているようには思えない列車のセット撮影、さらには頭の中がウニになってしまうようなクライマックスのどんでんかえしなどなど、どこを切ってもとにかくひどい。
しかし、そのひどさがかえって評判になってしまい、今や世紀末日本を代表するカルト映画になってしまった珍作中の珍作。まるで日本のエド・ウッドと化してしまった水野晴郎は、映画の可能性というものを、別な意味で押し広げてくれた功労者といえるかもしれない。
敬愛するマイク水野先生の大怪作として今後、邦画史上のマニアの間で燦然と輝きつづけるだろうと思われる。見終えるのに大変忍耐を要して、好奇心で借りたくせに、期待以上(?)の出来に退屈してしまった。映画好きがこうじて映画作れるなんて、評論家の人脈を通じた特権やろなあ。羨ましい。でも、2度見ようとは思わない。2は以外にもまともになってるらしい。こんな作品なのに、愛蔵版だの完全版だの出てるのが、ある意味すごい。
DVD 東宝 2002/10/25 ¥8,400
時は戦国時代。夜盗化した野武士の横暴に苦しむ農民たちは、侍を雇って村をまもろうとする。かくして集められた7人の男たちの活躍をダイナミックに描いた、巨匠・黒澤明監督の堂々3時間30分に及ぶ、古今東西の映画史上永遠に残る名作中の名作。
合戦シーンのすさまじさとリアルさは言うに及ばず(三船敏郎が「1本の刀では5人も斬れん」とストックの刀を用意するところはゾクゾクした)。7人の個性的面々のキャラクターの見事な描き分けもすばらしい。個人的には、リーダー格の志村喬のおおらかな威厳と、無口な剣の達人・宮口精二のニヒリズム、ユーモラスな加東大介が好みだ。農村の自衛を描いていることから、公開時は自衛隊礼讚映画といった批判の声もあがったが、無論今ではそんな無粋(ぶすい)なことを言う者はいない。
僕は完全版で見ましたけど、大画面で見てみたいなあと思いますね。確かに、長さを感じないくらい面白かったけど、難を言えば、話し声が聞き取りにくい。フランス人が、日本映画の保存状態の粗雑さに驚愕したというけど、この世界に冠たる傑作をですね、もっともっと大切に保管してくださいな。
三船の演技は、やっぱり黒澤映画あってしてじゃないかと思います。
黒澤じゃなきゃ、三船は引き立たない。
七人の侍、あんまり印象に残らなかった人もいるけど、一人一人に特徴を備えさせ、そこにいくらかのドラマを生まれさせる。そういった小さいドラマを交えながら、大枠の野武士との合戦への農民との結束が描かれていく。やっぱり雨の戦闘シーンは、映画的にはリアルじゃなくも、現実的には、限りなくリアルで、実際侍達の合戦というのはかくも泥臭いものであったに違いないと思われ、そう言う意味でも他の合戦者とは一線を隔していると思います。
そんで、やっぱり黒澤映画というものは、どんなにエンターテインメントをしていても、その底の部分には、ヒューマニズムがあるんですね。黒澤ヒューマニズム。晩年露骨になってくるけど、それを嫌う人がいるのは事実だけど、やっぱりそのヒューマニズムというパワーが黒澤映画を名作たらしめている一番の要因だという感じが僕はするわけです。
DVD ポニーキャニオン 2002/03/20 ¥3,990
ウッチャンナンチャン初主演のアクションコメディ。略奪された赤ん坊を取り戻そうとミリタリーおたくが奪還作戦を計画し、あらゆる分野のオタクを集める。パソコンや無線機を駆使して奇想天外な作戦を開始する。江口洋介、武田真治などの共演で描く。
この頃の映画が、自分の時代的には、一番「懐かしさ」というキーワードとリンクする。『僕らの七日間戦争』とか、『戦国自衛隊』なんかもこのちょっと前の時期じゃなかったかな。
確か、友人と見に行った。『病は気から』と同時上映だったかな。
おたくという言葉が市民権を得て、多分、この頃は映画見てもわかる通り、アニメに特化した言われかたでもなかったと思うし、否定的な要素も「おたく」という言葉には今ほど含まれてなかったと思うんだけど。少なくとも僕はこの七人のおたく達をカッコよく見てた気がする。
特にウッチャンが、カンフーしててカッコよかった。
DVD 角川エンタテインメント 2005/04/08 ¥4,935
卒業が危ぶまれている大学4年生の秋平(本木雅弘)は、卒論指導教授(柄本明)から単位習得の変わりに彼が顧問を勤める弱小相撲部の試合に出場することに。しかし、そこで惨敗し、OBに罵倒された彼は勝利宣言をしてしまい、そのまま相撲部に残ることになってしまう……。
『ファンシイダンス』でデビューした周防正行監督の第2作。前作同様、今の流行から外れた世界をコミカルに、やがては感動的に描く独特のセンスはここで遺憾なく発揮されている。またここでは『がんばれベアーズ』よろしく、駄目チームが奮闘努力して勝利をつかむカタルシスにも満ちあふれており、後味もすこぶるよい。試合本番のたびの下痢になる相撲部キャプテン役の竹中直人など、キャストの個性もそれぞれ面白い。キネマ旬報ベスト・テン第1位など、その年の数々の映画賞を受賞。日本映画ではなかなか成功しづらいコメディー路線の壁を突破した画期的な作品と捉えることも大いに可能な快作である。
周防監督の映画は、じわじわと好きになる。一番好きなのはシャルウィダンス。実は、天邪鬼な僕は最初はそんなに好きじゃなかったんだけど、何故か何回か見る機会があって、そのうちにジワジワと大好きになっていった。この作品にしても、ファンシーダンスにしても、周防監督独特のクールなユーモアとでもいうか、そういった部分が納豆のように不思議な感覚を持って後に残るのだ。シャルウィダンスも、展開が読めたりある意味王道のドラマであったりするけど、だけどけして平凡な作品ではない周防マジックがあるようで、幸せな気分になる。
VHS 大映 1994/04/08 ¥3,873
平清盛全盛の頃、反乱の徒を欺くため上皇らの車に身代わりの女を乗せる。警護役の盛遠は女を恋慕し、その夫との間に確執が起こる。海外受けを狙った絢爛たる時代絵巻。
ドナルド・リチーは確かこれを単なる日本エキゾチズムの発露した映画にすぎないとか言ったような言わないような。
時期的には、黒澤の羅生門が海外で評価されて、え?こんな日本的なものの方が海外で受けるの?って感じで、作った感があるけれど、非情に色彩が鮮やかで、また現在の俳優には絶対にできないだろう、日本貴族的な演技には、どことなく伝統芸能じみたものを感じて、逆に今見ると新鮮だ。ストーリーは、これから罪を背負っていきる男、まあ、教訓話ですね。
DVD 角川エンタテインメント 2000/11/23 ¥4,935
日本有数の都市銀行ACBにおいて、総会屋への不正融資疑惑が発覚する。まったく危機感を持っていなかった上層部に対して、ミドル社員4名が銀行の浄化に乗り出す。
高杉良の原作を映画化した“ビジネス・バニック・ムービー”。原田真人監督は、単に事実を再現するのではなく、シミュレーション的なドラマの中に巧みにフィクションを折り込み、一種のヒーロー・ストーリーを作り上げた。たたみかけるようなタッチで観る者をぐいぐい引き込んでいくパワフルな作品でありながら、不思議と疲労を感じないのは、双方のバランスがとれているからだ。クライマックスである株主総会での展開がやや腰砕けな感はあるものの、銀行改 革にとりあえず成功した北野(役所広司)に、闇社会からの逆襲宣言がなされるというラストシーンの余韻が作品を引き締めている。
ハリウッドでも充分に通用するような出来にしあがっていると思う。つまり、邦画的でない。
スピーディな展開が気持ち良くて、面白かった。守旧派の老人たちと、若手のミドルたちという構図は、2時間という限られたの映画の時間の中でヒロイズムを強調させ、ドラマチックにさせるのには必要なのだろう。
椎名キッペイの演じたキャラに、社会でやっていくための人格の多くの示唆が含まれているように思う。
VHS 松竹 1991/07/27 ¥3,990
共に暮らす娘の婚期を気にかけながら生きる、元海軍将校のサラリーマン。やがて娘を嫁がせる彼の孤独と老いをあらわにした、名匠小津安二郎監督ならではのヒューマンコメディである。
全編ほのぼのとしたやりとりが続くなか、そこはかとない人生の厳しさや空しさなどが、達観した演出によりチラホラ見え隠れする。小津作品の常連である笠智衆の父親像も好演だが、娘役の岩下志麻の快活さも、それまでの小津作品とは違った味わいを醸しだしている。飲み屋で『軍艦マーチ』を聞きながら、ユーモラスに敬礼を交わし続ける人々のせつないシーケンスも、忘れがたい印象を残してくれる。
なお、この作品は小津監督の遺作となり、翌年、60歳の誕生日に息を引きとった。
無口な父親の子を思う心。子の幸せを思う心。娘を送り出す気持ちは、秋刀魚のはらわたの様に、ほろ苦い、かあ。笠智衆いいよなあ。
静かな日常。ほんとに、こんな静かな日常だったのかわからないけど、こんなの見ると、過去に憧憬の思いをいたしてしまう。静かな会話、静かなユーモア、静かなからかい。すべてがやさしい。
まあ、これは小津の世界だけなのかもしれないけど。
軍艦マーチのシーン。女将の顔も飲み客の顔も、笠智衆の顔も、皆心底楽しそう、皆心底幸せそう。そして、ちょっぴり切なそう。
淡々としていてもいい。こんな日常に憧れる。
DVD バンダイビジュアル 1999/04/25 ¥5,250
北野監督の第二作。ふとしたことから暴力団と対立することになった草野球チームの面々が、武器を求めて沖縄に飛び、出会ったやくざ(たけし)の不気味な暴力性に惹かれていく。全体的なシークエンスの繋ぎにやや難があるものの、存在感ある登場人物の意表を突く行動がもたらす映画的快感がたまらない。
武の作品で一番印象に残るものをあげるとしたら、この作品。
武が好き勝手やってる。もちろんいい意味で。武の創造性をいかんなく発揮している。映画の基礎教養がないからこそ、それが新しい個性の源泉になって、映画の不文律を冒すパワーを秘めている。そう思う。武は実は、「認められたい」人なんじゃないかと最近思うことがある。
だから、認められだして、客への媚びが見え出した。それ以後の作品はどうも好きになれない。「菊次郎の夏」のヴェネチア(だったかな?)でも上映後、万感の拍手でタクシーに乗った武は一言、「今回もうまくいったな」と言った。
その言葉を聞いてなんだかさびしくなった。武は、客に受けるだろうことを前提に映画を作り出したのか。。。そう思えてしまった。
認められてなくて、好き勝手作ってる武は、ひねくれていたかもしれないけど、パワーがあった。印象があった。
有名になって、武は必死に映画の勉強を始めたけど、すればするほど、彼独特の雰囲気が損なわれているように感じてならない。急場しのぎの勉強じゃ、昔からやってきたプロフェッショナルな監督たちに適うはずはない。武はそういう専門的な枠の外で培ってきた表現が評価されたわけだから、自分の作品を深めていくのに、もっと違ったアプローチの仕方があったはずだ。異端児と呼ばれたものが、だんだんと規制の枠に落ち着いていくように、ジャームッシュのように、武もだんだん凡庸な監督になってしまうのではないかと危惧している。
VHS 大映 1988/06/24 ¥14,490
森鴎外小説化したことでも知られる安寿と厨子王丸の話だが、荘園制度下運命劇、女性の悲痛な自己犠牲を謳い上げた傑作となった。宮川一夫(撮)がとらえたラスト、再会の美しさは比類ない。
溝口健二の作品には万人を、そして時代を超越して感動させる普遍性がある。なぜなら彼が、人間ならば誰でも持っている情や業といったものを、なんのけれんもなく、ありのままの真実として正面から描き出しているからに他ならない。そこには妥協がない、時にそれは重く辛いものとなる。しかしだからこそ彼の作品は、僕にとって自己の存在をも揺るがすほどの力を持つものとなり得たのだ。
そして、この作品こそ溝口の真骨頂だと思う。
ゴダールの「気狂いピエロ」でも引用されたそのラストで描き出される容赦のなさは、僕の心をかき乱し、今なおこすっても取れないヘドロのごとく脳裏にこびりついている。
DVD 東宝 2001/07/25 ¥6,300
高校生のヒロキは、ひそかに思いを寄せる美少女に「さびしんぼう」と名づけ、いつも遠くから眺めていた。そんな彼のもとに、ある日突然「さびしんぼう」と名のるピエロ姿の少女が現れ、次々と騒動をまき起こしていく。
『転校生』『時をかける少女』に続く「尾道3部作」の最終編。大林宣彦監督が故郷の広島県尾道市を舞台に、思春期特有のときめきをセンチメンタルに描いていく。ロマンチシズムも3作中一番強い作品で、ショパンの「別れの曲」が印象的に使われるなか、富田靖子が2人の「さびしんぼう」を巧みに演じきっている。尾美としのりをはじめとする大林ファミリーも総出演。公開時には黒澤明監督からも絶賛された秀作である。
おーい、さびしんぼう。さびしんぼうやーい。
広島の大学に行ってたとき、卒業間近で、大分に帰る前の占めとして尾道に行ったのだ。なんとなく、シネフィル(映画狂)で文学青年気取りだった僕は、東京物語や尾道三部作、志賀直哉とか、別に尾道に住んでた訳でもないのに、ノスタルジーを求め、感動したりしてたなあ。
大林監督の映画って、恥ずかしくなるほどくさいのも多いんだけど、この作品も多少そういうところがあるんだけど、露骨にノスタルジーだけど、ノスタルジー人間の僕にはやっぱりいいのです。ノスタルジーって年でもなかろうに。と一人つっこみ。大林監督は地方を大事にしてくれるよね。
以前は尾道にいつか住みたいなんて思ってたけど、よく考えたら、坂ばかりだから、いざ住むとなると、うんざりするかもしれない。
DVD PI,ASM 2001/08/24 ¥4,935
これまでに幾度となく映画化されてきた滝沢馬琴の古典を、数々の青春TVドラマで知られる鎌田敏夫が現代風にアレンジし脚本化、名匠・深作欣二監督がメガホンをとった角川映画大ヒット・アクション時代劇大作。
悪霊軍団によって滅ぼされた里見家の静姫を救うべく、八つの玉で結ばれた八犬士たちが大活躍。主演・真田広之らが繰り広げるアクションの数々は、日本のみならず台湾をはじめとするアジア諸国でも話題となり、後のアジア娯楽映画製作に多大な影響を及ぼすことにもなる。また、そのさなかで行われる真田と薬師丸ひろ子のラブ・シーンは、当時のファンに大きな衝撃を与えた。深作映画らしく、夏木マリや目黒祐樹などの悪霊たちが、実にいきいきと画面いっぱいに立ち振るまっているのも魅力的。
小さい頃、怖くてたまらなかったくせに、戦国自衛隊と並び、角川といえば、この作品と思うほど好きだった。
真田広之と薬師丸ひろ子が良い。今見ると、どうなんだろう?思い出は、思い出である限り美しいのかもしれない。でもDVDデッキ買ったら、多分買うと思う(笑)
DVD 東宝 2005/05/27 ¥4,725
美しい都の女と彼女に魅せられた山賊が辿る怪奇物語を綴った坂口安吾の同名短篇小説を映画化。山賊は山で襲った都の女を家に連れ帰るが、彼女の頼みで都での生活を始める。だが、やがて女は“首遊び”のために山賊に生首を取ってくるよう要求し始める。
小説を読んで、えらいおどろおどろしさに、驚いたけど、この映画も、やっぱおどろおどろしてる。
桜は美しいがなんだか恐ろしいものですな。というが僕は桜を見てもちっとも恐ろしくならないんだなあ。
1952年新東宝・児井プロ
溝口監督=田中絹代、入魂の最高傑作。井原西鶴の「好色一代女」をもとに、封建制度化で御殿女中から夜鷹にまで流転する女の過酷な生を綴る。徹底したリアリズムの演技、クレーンを駆使した1ショット長回しなどがもたらす映像の厳しさ、美しさは類例を見ない。巡礼帰りの百姓たちにさらしものになるシーンは白眉。
なぜこの作品がアマゾンにないのか解せん。
それにしても、か、過酷過ぎる。溝口監督は、客に対する一切の甘えがないから好きだ!これでもかというほどの悲惨。しかし救いがないように見えるこの作品、ラストで見せる女の笑い。人間はどんな状況でもいきることができるという強靭なたくましさなんだと思う。人間らしさとはその住む社会によって変容する。彼女は悲惨になったのか?裕福であることがプライドであったならばそんなものすでに跡形もないだろうが、彼女は、そういったものを全て必要としない社会で、悲惨、卑屈というものが健全さとして息づく社会では、最後の彼女の姿こそが真っ当な人間として映ることだろう。人間の善性の執着の対極に、人間の徳に対する諦観がある。その双方ともが、苦とも楽ともなりえる。彼女が、過去の自分の未練を完全に解き放てれば、新たな概念の創出、現在の自分を幸福として受け入れることも可能だろう。あの笑いが、哀れな人間に対する嘲りか、未練に引きずられた慟哭かで、この作品の持つ意味もがらりと変わってくる。
DVD キングレコード 2003/11/27 ¥5,775
碇シンジの精神世界を描写するに終ったTVシリーズの25話・最終話をリメイクする「第25話・Air」と「第26話・まごころを、君に」の二部構成で、全ての謎の解明がなされる。

僕は、以前、人間のエゴは人との軋轢を生むだけで、お互いが、他者への慈愛を持つことにより、エゴを放棄して、お互いの欲求を補完しあうことにより、それが自分のエゴを充足させる、というようなことを書いたけど、今回始めてエヴァをみて、まあ人の考えることってなんて似ているんだろうと、驚いてしまった。
人類補完計画。人の心の補完計画。物体は消失し、あらゆる人類が一つへと融合することにより、個々の人々の欠落した心の部分を他者の心により補完しあい、完全なる充足の世界を手に入れる。それは喜びや悲しみを超越した一つの生への完結。
僕の考えてたことと非常に似てるなあ。ただ、僕は一つの生の融合なんて望まないけどね。やはり人は一人一人他者でいるべきで、その中でより軋轢のない関係を探っていきたいということなわけであって、一つに融合しなくても補完は、理論上は可能なのだと思う。だけど、現実的には、人類がわかれている限り、それだけ多くの個性が完全に補完しあうのは、無理。だから、その歯がゆさを、この監督はエヴァで発散させたのかなあと。
でも、ラストで残るシンジとアスカの2人の人間は融合しなかった。いわば新たなアダムとイブ。つまり、やはり人類は個々の人間として、軋轢の中で、上手く補完しあえる未来を探っていきましょうという、希望とも絶望とも取れるが、明確な一歩を示して終っているということで、エヴァは曖昧ではなく、作品としての明確な答えを出しているわけで、それは、僕は努力を放棄しなかった、努力しつづけるという選択をしたアンノ監督を評価したいと思う。

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