強い人

2009年12月3日 僕について
●Hさんは、苦労人で、親とは絶縁状態で、高校時代から一人住まいをしていた人である。職歴もホテル業から飲み屋のボーイ、金融業とか、様々な道を渡り歩いて、色んな方面に沢山の知り合いがいる。
そして、そうした人生で起こった問題を一人で切り抜けてきた人だけに精神的に強い。
僕が車の事故を起こしたとき、Hさんは色々なことを親身になってやってくれた。
相手との証言の食い違いで揉めていたときは、色々とアドバイスをくれたり励ましてくれたり。
相手と自分の証言の食い違いにたいしても、絶対に引き下がるな、いざとなったら自分の知り合いの弁護士に頼んでやるとかって、僕よりもHさんの方が熱心だった。
だから僕が、相手と争う気力をなくし(相手に怪我を負わしたという呵責の念もあり)、自分に責があると認めたときには、激しく怒った。
当然僕には僕の考えがあり、僕はその自分の性格や考えなどを伝えて、Hさんの怒りは収まったわけだけど。
「まあ、そこがお前のいいところでもあるんやけどな。でもまたこんなことがあったら絶対連絡しろよ。お前一人で解決しようなんて思うな」
と言ってくれた。
そして、その後、知り合いのディーラーを紹介してくれて、以前の車と同じ額でずっといい車を手に入れることができた。

受け入れることばかりがやさしさではない。
Hさんは不満であれなんであれ、自分が感じたことは言葉できっちり伝えてくる。だから色んな相手と争いが耐えず、一時派遣会社の営業をしていたときも、派遣先の業者の、派遣した労働者に対する対応の酷さに、そんなだったらうちの人間をやらせるわけにはいかない、と抗議して謝らせたり、会社内でも違う支店の店長ともやりあったり。でもそういう強さは、一人で生きていくには必要だったのだろうと思う。
だけど聞く耳はしっかり持っている。

Hさんが激しく怒ったとき、僕はふと、あ、この人だったら信用できると思った。
この人は、他人の問題でも目を逸らそうとせず、自分のことのようにとことんまで真剣に向き合おうとする人だ、と感じた。

信念や「こうありたい」みたいなことを語る人ではないが、彼の行動自体が、彼の信念であるように映った。

僕はこれまでそういう人に会ったことがなかったので、Hさんとの出会いはひとつの感動だった。
僕も、誰かが問題を抱えているとき、そしてそれを真剣に自分に語りかけてきたとき、しっかり向き合えるような人間でありたいと思った。

だから、僕はHさんが癌になったとき、株の資金を貸すことを申し出たのである。
何かの機会があれば、Hさんのその姿勢、誠意に、Hさんのように向かい合うことのできる人間として報いたいと思っていたからだ。

Hさんは派遣会社の時も一番働いていてじきに社員になった。
でも他の支店の店長と喧嘩して辞めて、でもその派遣会社でバイトしていた工場から声がかかり正社員になった。
癌の治療もHさんの知り合いの医師が可能な限り易く見積もって施術に当たった。

Hさんは、その姿勢ゆえに人との争いもあるが、その姿勢ゆえに沢山の人から手をさしのべられる人である。

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