「夜の街には妖怪がいるんだ」
大学時代、僕は友人M氏の誘いで、自転車で度々広島の夜の街を疾走した。
どこの店も閉まっている夜の街の中をただ、妖怪達の気配を感じる、それだけのために徘徊した。
くだらなくもあり、でもそんな発想をするM氏の行動は常に独創的で面白かった。無意味とも思える彼の発想にも僕は好奇心を持って付き合った。
春に桜が咲き誇る季節。
M氏は三度笠と股旅姿で僕の部屋に現われた。
広島城に桜を観にいこう。
僕は広島城の桜の下、三度笠と股旅姿のM氏を写真に収めた。
帰りにタクシーの運転手に呼び止められ、あんたらどこからきたんや、と問いかけられた、みんな彼の姿に非日常を感じていたのだろう。
M氏は読書家であったが右よりの人間で、畳の部屋に起居し読書するときは正座。天皇を崇拝し、歴代の総理大臣の名前を順に全ていえた。
彼は僕に読書を説いた人物だが、彼が勧めてくる本は歴史や天皇に関してのものと偏っていた。
僕はどちらかというと哲学や文学に興味を持っていて、そういう方面の読書を進めていった。
彼は右翼的人間で、僕は心情的に左翼な人間だったから、彼とはよく議論になった。
僕は心情的に左翼的であるだけであって、けして左翼ではないのだが、彼は僕のことをコミュニストだといい、議論が白熱して喧嘩っぽくなったときには、大学の図書館で僕が卒論の調べ物をしていた机の上にハードカバーのぶっとい「資本論」を全巻置いて帰ったりした。嫌がらせすらも独創的だった。
M氏は、アパートの大家と喧嘩をし、卒業を待たずして地元に帰ってしまった。授業はもう週に一度だけ出ればよかったので、地元からでも支障は無かったのだろう。
M氏とは、僕が読書をしだしてから議論が多くなった。
当時はお互い若く、議論と喧嘩の境目をはっきりさせることができずに、結果互いの仲を裂く結果となってしまった。
だけど、今思い返すと、僕は彼の個性に魅了されていた。
人生で自分の価値観、もしくは人生をがらりと変えてしまう運命の出会いがあるとすれば、僕にとってはおそらくM氏だったろうと思う。
大学時代、僕は友人M氏の誘いで、自転車で度々広島の夜の街を疾走した。
どこの店も閉まっている夜の街の中をただ、妖怪達の気配を感じる、それだけのために徘徊した。
くだらなくもあり、でもそんな発想をするM氏の行動は常に独創的で面白かった。無意味とも思える彼の発想にも僕は好奇心を持って付き合った。
春に桜が咲き誇る季節。
M氏は三度笠と股旅姿で僕の部屋に現われた。
広島城に桜を観にいこう。
僕は広島城の桜の下、三度笠と股旅姿のM氏を写真に収めた。
帰りにタクシーの運転手に呼び止められ、あんたらどこからきたんや、と問いかけられた、みんな彼の姿に非日常を感じていたのだろう。
M氏は読書家であったが右よりの人間で、畳の部屋に起居し読書するときは正座。天皇を崇拝し、歴代の総理大臣の名前を順に全ていえた。
彼は僕に読書を説いた人物だが、彼が勧めてくる本は歴史や天皇に関してのものと偏っていた。
僕はどちらかというと哲学や文学に興味を持っていて、そういう方面の読書を進めていった。
彼は右翼的人間で、僕は心情的に左翼な人間だったから、彼とはよく議論になった。
僕は心情的に左翼的であるだけであって、けして左翼ではないのだが、彼は僕のことをコミュニストだといい、議論が白熱して喧嘩っぽくなったときには、大学の図書館で僕が卒論の調べ物をしていた机の上にハードカバーのぶっとい「資本論」を全巻置いて帰ったりした。嫌がらせすらも独創的だった。
M氏は、アパートの大家と喧嘩をし、卒業を待たずして地元に帰ってしまった。授業はもう週に一度だけ出ればよかったので、地元からでも支障は無かったのだろう。
M氏とは、僕が読書をしだしてから議論が多くなった。
当時はお互い若く、議論と喧嘩の境目をはっきりさせることができずに、結果互いの仲を裂く結果となってしまった。
だけど、今思い返すと、僕は彼の個性に魅了されていた。
人生で自分の価値観、もしくは人生をがらりと変えてしまう運命の出会いがあるとすれば、僕にとってはおそらくM氏だったろうと思う。
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