乗り越え点

2009年10月28日 日常
大江健三郎の『万延元年のフットボール』
最初は読みにくいなあと思っていたけど、文体に慣れると、それでも難解ではあるけど、その内容に次第に没頭して、圧倒されてしまった。

この小説は自慰的と感じるほどに、ちと難解だけど、それは本人も自覚しているようで「極めて難解な文章の奥に、こちらへの伝達を切望する、赤裸の心が透いて見えるのを僕らは感じているのではないでしょうか?つまり書き手が、ただ彼自身のためにのみ書いているような性格、つまり他者を拒んでいるような性格を見出すのではないか・・・」と書いていたりする。
しかし、そのように書かざるを得なかった当時の作者の心境に、読者を没頭させる真に迫った言葉が存在し、ゆえに僕は徐々にその言葉に埋没していったのだろうと思う。

自分の中の地獄を確認し、本当のことを言うことでその地獄を乗り越えていったものたち。になれない卑小な自分を意識しながらも、それでも何とか、自分の中の問題と対峙していこうと決意する主人公の姿に作者の苦悩のあとが窺われる。

作者はこの作品によって何を乗り越えたのか、これより前とあとの作品を読み比べてみても面白そう。

でもこの作品のレビューを書くのは難しそう。。。

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