映画 『インスタント沼』
監督: 三木聡

出版社に勤めるハナメは、ビミョ~な女性誌の編集者。微妙すぎて売り上げが伸びず、ついに休刊。会社を辞め、好きな男にもフラれ、人生をやり直そうと思った矢先に、ハナメの父親が沈丁花ノブロウという知らない男である事実を知る。確かめようと実家に行くと、母親は河童を探しに行って池に落ち、病院に運ばれていた。手紙の住所を頼りに、沈丁花ノブロウを訪ねると、そこは「電球商店」という怪しげな店だった。



ジリ貧な人生を脱却するには、蛇口をひねればいい。
この蛇口というのはきっと暗喩で、自分を締め付けている色んな締め付けを解きましょうと。
ハジメはジリ貧な自分の人生を悲嘆しているようでアッサリスッパリ、端から見るととてもサバサバとしていてクヨクヨせずに楽しそう。
登場人物みんなあっけらかんとしていて、こんな世界だったらいいのにと思わせる魅力がある。
駄洒落や、シュールなギャグ的要素がちりばめられ、これを好むか好まないかはその人次第だろうけど、僕が見た映画館ではかなり笑い声が漏れていた。僕自身は一度笑ったくらいだけど、印象は悪くない。
つまり、人生悲劇もまた喜劇なのだ。

ハジメは、会社もスパッと辞めるし、リセットしようと部屋の持ち物全部売っぱらうし、色んなものに執着がないように見える。
感情はあるが未練がない。
母が死に直面しようと、自分の父親が違っていようと、失恋しようと、落ちこんだ次のシーンにはもう元に戻っている。
これが画面を通してみると非情にいい塩梅で、ポジティブな気持ちを惹起させる。

何か、ルノワールに通じる人生の肯定感がある。
鷹揚な態度で悲哀を受け止める。

ハジメは、人生がジリ貧なのは、意地や見栄といったつまらないもので自分を縛り付けていたからだと気付き、自らのつまらないプライドの蛇口をひねる。
すると、普段見えないものが見えてきた。

今まで見ることができなかったそれは実は色んな人やものに影響して、ハジメの人生を変えてしまうのだった。
いや、実際は変わってない。見えないものが見えたとき、人生で起こっていることは同じでも、全く別物に感じるということなのだ。
何かに行き詰ったとき、蛇口を開放できたなら、きっとジリ貧であった人生もジリ貧とは感じなくなるかも?
つまりはそういうことなのだと思う。

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