読書 『人間の事実〈1〉生きがいを求めて』
2008年10月23日 読書日本が経済大国となって大きく変貌しはじめた一九七〇年代以降の四半世紀に、多様なテーマを扱った優れたノンフィクションが、さまざまな表現法で書かれてきた。
生と死、病気と障害、病める社会に生きる現代人のパッションと揺れ動く生き甲斐…。
一万冊を読破した著者がそこに見た、同時代日本人の自画像。
第1章 自分の死を創る時代
第2章 病気というパッセージ(通過関門)
第3章 障害、そして「第三の日本人」への道
第4章 病む社会の“人間の物語”
第5章 現代人のパッション
第6章 生き甲斐が揺れ動く時代
著者のよるところによると、現在はノンフィクションの時代であるという。
確かに現在、良質のノンフィクションがあふれんばかりに書籍化、映像化されていて、その中で接するべきノンフィクションを選ぶことが難しくなっているくらいだ。
柳田邦男氏の膨大な読書暦には驚嘆するが、自分が感銘を受けた書籍の列記が多く、柳田氏の、多くの作品に触れて欲しいという気持がよくわかる。しかしながら、故に少し煩雑で説明不足になりがちな感も否めなく、もう少し的を絞っても良かったのではと思う。
とはいえ、彼が接してきた著作を通して、日本人の価値観の変遷や、そこから見られる人間の心の描写は、実に巧みで、読んでいて興味深かった。
人間は何かの出来事を転換期として、様々に心を変容させる。そこから、生きがいとはなんであるのかを探っていくわけだが、その契機となりえるい事象には、些細なことから、重大な悲しみに至るまで多岐にわたり、それだけ人間の可能性と危険性が浮き彫りになる。
ノンフィクションに接するとは、人間を深く知るということなのである。
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