映画 『4分間のピアニスト』
刑務所で受刑者たちにピアノを教えるクリューガーは、ある日、稀に見る才能の持ち主ジェニーに出会う。反抗的で暴力的なジェニーは、幼い頃から神童と騒がれた天才少女だったが、今では刑務所内随一の問題児となっていた。嫉妬心と憎悪を露にする看守や受刑者仲間の卑劣な妨害にもめげず、クリューガーはジェニーの才能に葬り去ったはずの自らの夢を託し、コンテスト出場を目指して厳しいレッスンを続ける。

人の人生には、人生の数だけ、ドラマがある。
それぞれの人生を知らなければ分かり合えないこともある。
厳格な老ピアノ教師と、類まれな才能を持った囚人女性のコンテストに向けた訓練の中で、心を通じ合わせていく。
才能にしか目を向けていなかった老教師は、囚人女性のという人間自体に興味を持ち出す。
「あなたには、才能がある。人間は与えられた才能を磨く義務がある」
自分の才能を運命によりつぶされた囚人女性の過去を老教師は知る。
お互いが過去を知り合ったとき、受け入れたとき、本当の信頼が生まれる。
いつしか教師は、彼女の才能を花開かせることよりも、その才能により彼女の人生を救いたいと思うようになったのでなはないか。

人の真の才能に目を向けるには、その人間をしっかりと見つめないことには出来ないことだと思う。
ラストの彼女の演奏は、これが自分だと主張する。
過去から、運命から逃れられるという安易なラストではない。
彼女は、老教師に向かって運命を犠牲にしてでも、自分という人間を見せたかったのだ。
その魂の叫びは、老教師の期待にそぐったものではなかったにしろ、老教師が期待した以上の何かを、教師の心に残したに違いない。
それは、女性囚徒の存在の意義を示してくれた老教師に対する、彼女の精一杯の返礼であったのではないだろうか。

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