(99分・35mm・カラー)土曜日の夜,、銀座のバー「トンボ」は賑わっていた。店が引け若いホステスたちを見送ったあとベテランホステス・葉子(池内淳子)はアパートの部屋で死の床に向かう。過去の回想が始まる。葉子を囲っていた大学教授・松崎(池部良)。弁護士で子持ちの畑(有島一郎)。TV局の若手敏腕プロデューサー清水(高島忠夫)。学生時代からの葉子のファンで今はワイン会社の若き社長・野方(三橋達也)。さまざまな男が現れ通り過ぎる。
しかし葉子の気が一番休まるのは、古美術商の高島先生(佐野周二)と会っているときだった・・・
貧しい家を出、手に職もなく、女は、誰かの庇護になるか夜の世界の蝶となるしか術がない。
そこでであったさまざまな男との出会いと別れ。
肉体の交差する感情ばかりの中、古美術商の高島だけは、肉体を交えない。そこに葉子は、愛の純粋を求めた。
高島は、肉体を交えないことで葉子の愛を一手に掌握したのだ。
人間の酸いも甘いも知った上で、それでも人に対する理想を抱き続けたいというのは、よくわかる。例え、相手がどうしようもなく落ちぶれてしまっても、葉子は、高島に純粋を求めるのだ。
真実は、どうでもよい。そう思える相手がいることが、葉子にとって何よりの救いだったのだろう。
池内涼子演じる葉子のけなげな美しさは、その影ゆえにいっそう際立つのである。
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