映画 『コレクター』
2007年5月26日 映画〔洋画〕
DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2005/09/28 ¥2,000
僕は男の、一般的には歪んでいるととられるだろう思考の裏にある、苦しみや孤独感が、わからなくもないので、手放しにこの作品を肯定することはできません。サスペンスとしての出来はよいと思いますが、男の怖さだけが強調される終わり方には、どこか引っかかりを覚えます。そういう自分の中の良識だのモラルだのを考慮せずに見るということが僕にはできないので、作品を十分に楽しめませんでした。
『ローマの休日』『ベン・ハー』などの名匠ウィリアム・ワイラー監督による異色サスペンス映画。蝶の収集を趣味とする銀行員(テレンス・スタンプ)が、蝶の代わりに女子美術大生(サマンサ・エッガー)を誘拐し、人里離れた一軒家に監禁。決して手を触れる事なく、ペットを愛玩するように優しく飼育しようとするが、彼女は脱走を試みる。拘束を解く約束の期日を男が守ったなら、これはサスペンスではなく、孤独な男の心裡をゆがめるに至らせた世間の良識ぶった人々の欺瞞に対する痛烈な批判ともなった作品だと思いますが、それだと作品としての完成度は低くなってしまっただろうと思います。
その後の猟奇監禁ものの原点ともいえる問題作で、後の同ジャンル作品はほとんど本作のパターンを踏襲しているといっても過言ではない。ワイラー監督は蝶を象徴的に用い、また密室空間を巧みに活かしながらサスペンス効果を盛り上げるが、それにしても彼がこうしたダークサイドの作品を手掛けていたことが意外といえば意外ではある。怪優テレンス・スタンプの出世作。一見おとなしそうに見える男の異常心理を、気持ち悪いほど見事に体現している。
僕は男の、一般的には歪んでいるととられるだろう思考の裏にある、苦しみや孤独感が、わからなくもないので、手放しにこの作品を肯定することはできません。サスペンスとしての出来はよいと思いますが、男の怖さだけが強調される終わり方には、どこか引っかかりを覚えます。そういう自分の中の良識だのモラルだのを考慮せずに見るということが僕にはできないので、作品を十分に楽しめませんでした。
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