読書 『午後の曳航』
2007年3月26日 読書〔小説・詩〕
ISBN:4101050155 文庫 三島 由紀夫 新潮社 1968/07 ¥380
やがて彼らは、自分たち自身が、世界の堕落、堕落した大人へとそまっていってしまう抗いがたい現実を直視することになるだろう。そのときに、自分自身に同じ儀式をすることができる者しか、栄光を留めることはできない。
しかして三島は自身に決行してしまったのだ。自分自身の堕落を阻止すれば、その後の世界の堕落を見ることも染まることもない。
少年達は、他者に栄光のあこがれを見、三島は、自分自身に栄光を見た。少年達の願いを突き詰めたなら、そうならざるを得なかった訳である。
だから、この小説は、三島の生き方をなぞったような作品に僕には映った訳なのです。
船乗り竜二の逞しい肉体と精神に憧れていた登は、母と竜二の抱擁を垣間見て愕然とする。矮小な世間とは無縁であった海の男が結婚を考え、陸の生活に馴染んでいくとは・・・・・・。それは登にとって赦しがたい屈辱であり、敵意にみちた現実の挑戦であった。登は仲間とともに「自分たちの未来の姿」を死刑に処することで世界に反撃する―。少年の透徹した観念の眼がえぐる傑作。少年達は、気づくべきだったのだ、一人の人間の堕落を阻止したところで、世界中で堕落は起こっている、自分たちの行為は、目の前の堕落を回避するだけの仮初めに過ぎないことを。
やがて彼らは、自分たち自身が、世界の堕落、堕落した大人へとそまっていってしまう抗いがたい現実を直視することになるだろう。そのときに、自分自身に同じ儀式をすることができる者しか、栄光を留めることはできない。
しかして三島は自身に決行してしまったのだ。自分自身の堕落を阻止すれば、その後の世界の堕落を見ることも染まることもない。
少年達は、他者に栄光のあこがれを見、三島は、自分自身に栄光を見た。少年達の願いを突き詰めたなら、そうならざるを得なかった訳である。
だから、この小説は、三島の生き方をなぞったような作品に僕には映った訳なのです。
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