ISBN:4150102376 文庫 飯田 規和 早川書房 1977/04 ¥840
菫色の霞におおわれ、たゆたう惑星ソラリスの海。一見なんの変哲もない海だったが、内部では数学的会話が交わされ、みずからの複雑な軌道を修正する能力さえもつ高等生物だった!人類とはあまりに異質な知性。しかもこの海は、人類を嘲弄するように、つぎつぎと姿を変えては、新たな謎を提出してくる・・・・・・思考する〈海〉と人類との奇妙な交渉を描き、宇宙における知性と認識の問題に肉薄する、東欧の巨匠の世界的傑作。
僕は今までにSFを読んだことがなかったんですが、本書はタルコフスキーが映画化していた関係で手に取ってみました。他のSF作品を読んだことがないので、比較することは難しいのですが、文学作品としてみてみても、本作は相当の傑作であると思います。1960年代にこのようなアイデアが生まれてきたことも驚きです。SF作品が陥っている既成概念の盲点を突いています。つまり、SFで描かれる多くの知的生命体は、人間の思い描く理論の範囲内に収まった形(友好的であるとか、敵であるとか)で表現されていますが、レムはその既成概念の殻を破る、そこからこの作品は出発しています。海自体が一つの生命として発展する、こういったアイデアは、他のSFにも類例がないのではないでしょうか。
僕は、これはSFでありながらSFでない、というか、非常に哲学的な小説と感じました。タルコフスキーが映画化しようと思ったのも納得がいきます。
また、飯田氏の訳も大変すばらしく、原作の雰囲気を損ねることなく日本の読者に伝えることに成功していると僕は思います。
それにしても、人間の好奇心というものは、何というか、一番不可思議なものだなあと思いますね。

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