歌人の妻と、その妻のもとを逃げ出して愛人宅に住みながら砂金掘りに熱中する男。そしてその男に献身的に尽くす愛人。三者三様の立場を一人娘(千葉)の視点から描いた本作は、キネマ旬報ベストテンの第1位に選ばれた傑作。なお、本作はアメリカで初めて一般商業上映された日本映画でもある。
朗らかという言葉は、会話の中では今や死語に近いかもしれませんが、この頃の日本ではよく使われていたようですね。僕はこの言葉に優しいものを感じて、好きですね。
昔の人というのは、穏やかですね。怒るにしても、話すにしても、会話が丁寧でやさしく、あこがれます。
この作品は、まあ父親が悪いといえば悪いのですが、ただ単なる不倫もの愛人ものとしてはすますことのできないやるせなさがあります。それはつまり人のあり方、人の法を犯してまでも手放せない人間への情というものが存在していることをこの作品はまざまざと描いているわけです。それは、現代よりも生活の困窮が身近であるこの時代の方がより鮮明に浮かび上がり、その力というものは、人間的にすばらしい人、正しい人でさえも道を外させるほどであるのです。
人の人生には、様々な事情が介在しているのは当然で、それらを無視して、その人たちの立場を断罪してしまうことはできません。そこにこそ、人間関係のやるせなさ、いおうようのない切なさがあるのでありますし、ドラマにもなるのですね。
戦前の作品ですが、大変すばらしい人物の心理描写に、現在でも充分に学ぶところはあるように思います。

コメント

nao
2006年5月29日23:58

こんばんは。
私もこの作品、確かに観た記憶があるのですが、今みたらまだレビューを書いていませんでした(^^;;多分、しっかりと観ていなかったかも..。確か、お父さんは最後は不倫相手の方に行ってしまうのではなかったでしょうか..
成瀬作品の夫婦ものって結構、溝のある夫婦が多いみたいですね。そして女にちょっとだらしない男とか..しかし、この辺りがフランスなんかには受ける作品の色気みたいですね(笑)。でもって、私はどちらかというと成瀬作品の男性像にはちょっと感心しなかったりするのです(笑)。これは人さまざまなのですが・・(笑)。

キタム
キタム
2006年6月1日4:06

こんばんわ〜^^
おはようございますかな〜。今仕事から帰ってきたんです。午前四時^^;
そうですそうです。最後に父親は不倫相手の方に帰って行ってしまうのです。成瀬巳喜男は、やるせなきおってあだ名がついてたそうですから、溝のある人間関係を多く描いてたんでしょうね。僕はまだ二作しかみていないので何ともいえませんが^^;僕も基本的に、この作品の父親は善人であったとしても、行動はいまいち感心しません〜。
そうそう、なぜか、「妻」と「めし」の一番みたかった二つが録画失敗していました(涙)「泥の河」もテニスとかぶってて見れなかったし。。次の機会に期待です〜。

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