読書 『アンダーグラウンド』
2005年9月22日 読書
ISBN:4062639971 文庫 村上 春樹 講談社 1999/02 ¥1,000
膨大なインタビュー集といったほうがよく、作品の内容自体に村上春樹の独自性はほとんど見られない。ただ、評価されるとすれば、村上春樹の、できる限り事実を事実のまま伝えたいという姿勢だろうと思う。それは、実はそれほど簡単にできることではないと思うのだ。その後の小説が、それまでとは、明らかに変わっていったように思う。それまであくまで内省的な問題として描かれていたものが、外部(社会)との連関を持って描かれ出した。それは、自己満足であったものから、小説の他者への影響に対する自覚の現われ、それを背負う覚悟を持ったということなのだと思う。
村上春樹が追う、地下鉄サリン事件。村上春樹が、ある時期から社会に対して、デタッチメントの姿勢からコミットメントの姿勢へと転換した、その顕著な証明としての本作。
迫真のノンフィクション、書き下ろし。
1995年3月20日、晴れ上がった初春の朝。まだ風は冷たく、道を行く人々はコートを着ている。昨日は日曜日、明日は春分の日でおやすみ──連休の谷間だ。あるいはあなたは「できたら今日くらいは休みたかったな」と考えているかもしれない。でも残念ながら休みはとれなかった。
あなたはいつもの時間に目を覚まし、洋服を着て駅に向かう。それは何の変哲もない朝だった。見分けのつかない、人生の中の一日だ……。
変装した五人の男たちが、グラインダーで尖らせた傘の先を、奇妙な液体の入ったビニールパックに突き立てるまでは……。
膨大なインタビュー集といったほうがよく、作品の内容自体に村上春樹の独自性はほとんど見られない。ただ、評価されるとすれば、村上春樹の、できる限り事実を事実のまま伝えたいという姿勢だろうと思う。それは、実はそれほど簡単にできることではないと思うのだ。その後の小説が、それまでとは、明らかに変わっていったように思う。それまであくまで内省的な問題として描かれていたものが、外部(社会)との連関を持って描かれ出した。それは、自己満足であったものから、小説の他者への影響に対する自覚の現われ、それを背負う覚悟を持ったということなのだと思う。
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