オフ・マイク

2005年9月15日 テニス
今年のテニスの全米を最後に、一人のアナウンサーがマイクを置くことになった。

岩佐徹氏である。
僕がWOWOWに加入したのが、94年。試合の添え物くらいにしか考えていなかった実況が、実は試合を彩る重要な要素であることに気づいたのは、彼の実況に接してからだった。

彼の実況は、テニスへの愛で溢れていた。絶叫系の実況がはびこる昨今において、彼の話し方は穏やかで、清流のようであった。テニスへの深い含蓄を所々にちりばめながら、しかし決して試合そのものを阻害することは無かった。素晴らしいポイントの後には、声を張り上げず、しばしの沈黙の場を置き、視聴者に感動を共有する時間を与えた。
あくまで、試合を引き立たせる実況。実況が主役に踊り出ることは無いが、無くてはならないもの。彼の実況は、まさしくそういったものであった。

彼は他のどのアナウンサーとも違っていた。まさに岩佐徹にしかできない実況。そして、僕が最も臨んでいた実況。解説の柳氏との掛け合いは、いつも僕を楽しませてくれた。いつしか、他のアナウンサーの実況では違和感を感じるほどにまでなっていた。
僕はテニスと出会ってから、同時に岩佐氏のアナウンスと共に歩んできたのだ。僕のテニスは、岩佐氏を抜いては語れない。

岩佐氏の引退。その喪失感、寂しさは、計り知れない。
今回彼のブログにたくさんの書きこみがあり、僕と思いを同じくする人がこんなにもいたのかと驚き、そして同時に涙した。
テニス界は、一人の偉大な伝え手を失った。
今後彼ほどの後継者が現れてくれるだろうか?
後にも先にも、一人のアナウンサーの引退で涙を流すことは、もう無いだろうと思う。

岩佐さん、長い間、感動をありがとう。お疲れ様でした。
これからは、いち視聴者としてテニスを楽しんでくださいね。

いつかまた、岩佐さんの声が聞けることを願う一人の岩佐ファンより。

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