ISBN:4101065039 文庫 大岡 昇平 新潮社 1954/04 ¥340
昭和二十六年「展望」に連載、読売文学賞を受けた。いわゆる「戦後作家」の最も早期の作家として登場した作者は、かつての大戦の歴史的現象の中で精神をどのように試練されたか。戦後文学の「野火」には、近代の西欧文学と競おうとする作家の意欲と、大戦で味わった精神の所産の二つが火のような要求となって結晶している。
死のふちに片足を突っ込んだ人間が、その極限の恐怖から逃れようとするのを拒むのは、やはり最終的には、罪の意識によってなのであろうか。
ドキュメントの「ゆきゆきて神軍」を見てほしい。人間を猿と呼んだり、赤肉、黒肉と称して食されるという行為は、けして作り事ではない。
かつえた人間は狂気をも正気に変えてしまうことがあるという現実を知っておくことは、生もしくは死というものを考える上で重要である。

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