VHS 松竹 1991/07/27 ¥3,990
共に暮らす娘の婚期を気にかけながら生きる、元海軍将校のサラリーマン。やがて娘を嫁がせる彼の孤独と老いをあらわにした、名匠小津安二郎監督ならではのヒューマンコメディである。
全編ほのぼのとしたやりとりが続くなか、そこはかとない人生の厳しさや空しさなどが、達観した演出によりチラホラ見え隠れする。小津作品の常連である笠智衆の父親像も好演だが、娘役の岩下志麻の快活さも、それまでの小津作品とは違った味わいを醸しだしている。飲み屋で『軍艦マーチ』を聞きながら、ユーモラスに敬礼を交わし続ける人々のせつないシーケンスも、忘れがたい印象を残してくれる。
なお、この作品は小津監督の遺作となり、翌年、60歳の誕生日に息を引きとった。
無口な父親の子を思う心。子の幸せを思う心。娘を送り出す気持ちは、秋刀魚のはらわたの様に、ほろ苦い、かあ。笠智衆いいよなあ。
静かな日常。ほんとに、こんな静かな日常だったのかわからないけど、こんなの見ると、過去に憧憬の思いをいたしてしまう。静かな会話、静かなユーモア、静かなからかい。すべてがやさしい。
まあ、これは小津の世界だけなのかもしれないけど。
軍艦マーチのシーン。女将の顔も飲み客の顔も、笠智衆の顔も、皆心底楽しそう、皆心底幸せそう。そして、ちょっぴり切なそう。
淡々としていてもいい。こんな日常に憧れる。

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