VHS 大映 1988/06/24 ¥14,490
そして、この作品こそ溝口の真骨頂だと思う。
ゴダールの「気狂いピエロ」でも引用されたそのラストで描き出される容赦のなさは、僕の心をかき乱し、今なおこすっても取れないヘドロのごとく脳裏にこびりついている。
森鴎外小説化したことでも知られる安寿と厨子王丸の話だが、荘園制度下運命劇、女性の悲痛な自己犠牲を謳い上げた傑作となった。宮川一夫(撮)がとらえたラスト、再会の美しさは比類ない。溝口健二の作品には万人を、そして時代を超越して感動させる普遍性がある。なぜなら彼が、人間ならば誰でも持っている情や業といったものを、なんのけれんもなく、ありのままの真実として正面から描き出しているからに他ならない。そこには妥協がない、時にそれは重く辛いものとなる。しかしだからこそ彼の作品は、僕にとって自己の存在をも揺るがすほどの力を持つものとなり得たのだ。
そして、この作品こそ溝口の真骨頂だと思う。
ゴダールの「気狂いピエロ」でも引用されたそのラストで描き出される容赦のなさは、僕の心をかき乱し、今なおこすっても取れないヘドロのごとく脳裏にこびりついている。
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