読書 『夏の庭―The Friends』
2005年5月23日 読書〔小説・詩〕
ISBN:4101315116 文庫 湯本 香樹実 新潮社 1994/03 ¥420
子供の好奇心ほど残酷なものはなく、そしてまた純粋で暖かいものもない。好奇心とはさみは使いよう、なんてね。
多くの人は、自分の子供時代を少年たちに重ねて読んだことだと思うし、僕もそうだけど、それがいつの日が老人に重ねて読む日も訪れるんだろうな。
僕も子供のころ、二件隣の家のおじいさんに会いに行ってた。何の会話をしたのかは覚えてないけど、僕が行くといつもおじいさんは、お菓子のポーロをくれた。大人が食べるものじゃないだろうし、僕のために買っておいてくれたのかも。僕は、おじいさんを友達と思ってた。
成長して、僕はおじいさんにいつのまにか会いに行かなくなって、ある日おじいさんの死んだことを知った。僕にとっての身近な死は、今思えばあのおじいさんだったなんだな。
子供は、残酷だけど、純粋だ。その残酷さを知ることで、子供は純粋じゃなくなっていくけど、それを成長っていうんだよ。
ひとり暮らしの老人と子どもたちとの奇妙な交流を描いた中編小説。世界各国でも翻訳出版され、映画や舞台にもなった児童文学の名作である。アパートの大家のおばあさんと少女のふれあいをつづった『ポプラの秋』や、「てこじい」という異形の老人が印象的な『西日の町』など、死に直面した老人と子どもというモチーフは、著者が一貫して描きつづけているテーマである。子どもだけではなく、幅広い年齢層に支持されている本書は、その原点となる作品だ。
小学6年の夏、ぼくと山下、河辺の3人は、人が死ぬ瞬間を見てみたいという好奇心から、町外れに住むおじいさんを見張ることにする。一方、観察されていると気づいたおじいさんは、憤慨しつつもやがて少年たちの来訪を楽しみに待つようになる。ぎこちなく触れあいながら、少年達の悩みとおじいさんの寂しさは解けあい、忘れられないひと夏の友情が生まれる。
少年たちがおじいさんから学ぶのは、家の手入れの仕方や包丁の使い方、草花の名前、そして戦争の悲惨さである。物語の終盤、父親に将来の夢を聞かれ、小説家になりたいと答えるぼくは「忘れられないことを書きとめて、ほかの人にもわけてあげたらいい」と語る。少しだけ大人になった少年たちを、目を細めて見つめるおじいさんの姿が目に浮かんでくるようで、思わず目頭が熱くなる場面だ。本書は、他人への思いやりと、世代の異なる者同士が語り合い、記憶を語り継ぐことの大切さを説いているのである。
子供の好奇心ほど残酷なものはなく、そしてまた純粋で暖かいものもない。好奇心とはさみは使いよう、なんてね。
多くの人は、自分の子供時代を少年たちに重ねて読んだことだと思うし、僕もそうだけど、それがいつの日が老人に重ねて読む日も訪れるんだろうな。
僕も子供のころ、二件隣の家のおじいさんに会いに行ってた。何の会話をしたのかは覚えてないけど、僕が行くといつもおじいさんは、お菓子のポーロをくれた。大人が食べるものじゃないだろうし、僕のために買っておいてくれたのかも。僕は、おじいさんを友達と思ってた。
成長して、僕はおじいさんにいつのまにか会いに行かなくなって、ある日おじいさんの死んだことを知った。僕にとっての身近な死は、今思えばあのおじいさんだったなんだな。
子供は、残酷だけど、純粋だ。その残酷さを知ることで、子供は純粋じゃなくなっていくけど、それを成長っていうんだよ。
コメント