DVD パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2004/09/17 ¥4,179
一旦は引退を宣言したエミール・クストリッツァが、早々に前言撤回して撮り上げた音楽と喧騒とペーソスの人間賛歌『黒猫・白猫』。ドナウ川のほとりで生活するマトゥコとザーレの親子。石油を買ったつもりがだまされて水をつかまされ、挽回とばかりに一攫千金を狙って列車強盗を企てるマトゥコだったが、さらにヘマを重ねたせいで、ザーレは新興マフィア・ダダンの妹と結婚させられる羽目に…。
天井は貫けるは、ダイナマイトはボンボン爆発するは、ヤギは飛んでくるはの大わらわ。結婚式の前日に死んだ父親を屋根裏に隠そうとする悪戦苦闘や、1メートルに満たない花嫁が、その体の小ささを生かしてさまざまな方法で結婚式から逃げ出そうとする脱出劇などなど、ドサクサ紛れにいろんなことが起こり続ける展開に振り落とされずについていけるか。ひたすら躁状態であり続けるこのバイタリティ、そして奇想天外の末に生まれるミラクルは、もはやクストリッツァ以外の誰に求められないものである。
クストリッツァは天才だと思う。いや、奇才だと思う。いや、鬼才だと思う。彼の人間性から、そして彼は永遠のジプシーであり芸術家であるんだと思う。
彼の映画は彼にしか作り出せないし、その面白さはただ面白いと言うのじゃなくて、才能あふれんばかりの素人も玄人も誰しもをうならせることのできる、真のアートピクチャーであり、かつ娯楽作なのだと思う。その比率が娯楽性に若干傾けば本作になり、芸術性に若干傾けば「アンダーグラウンド」になるのだと思う。でも両方に両方の要素が過不足なく含まれて、クストリッツァという個性を強烈に形成している。
僕は彼の作品が大好きで、毎回楽しみで、いわいるひとつのファンなのだ。

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