DVD 東宝 2003/01/31 ¥6,300
時は戦国時代、甲斐の名将・武田信玄(仲代達矢)は敵の雑兵の弾に当たり死去。配下の者たちは「我が死を3年隠せ」という主君の遺言に従い、彼そっくりのコソ泥(仲代達矢・2役)を信玄の替え玉に据えて難を逃れようとするが…。
黒澤明監督が久々にメガホンを撮った時代劇で、製作にはフランシス・コッポラやジョージ・ルーカスも参加し、またカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど国際的貫禄を誇る作品。黒澤監督独特の色彩センスがもっとも幻惑的に映えた作品ともいえる。しかし、当初主演に予定していた勝新太郎をクビにしたり、また黒澤映画長年の名パートナーでもあった作曲家・佐藤勝が、芸術的見解の相違から音楽を降板するなど、製作上のトラブルの絶えない問題作でもあった。
そりゃね、勝新は日本を代表する名俳優でございましたよ。でもね、だからといって代役で演じた仲代が、勝新より格が落ちるのかといえば決して、決して!そんなことはないわけでありましてね。
仲代はもっともっと評価されていい俳優のはずなんですよ。僕はね、仲代を日本の俳優の中でももっとも素晴らしい役者だと思っているのでございあすよ。
仲代がどうして地味に思われるかといえば、それは仲代が、映画人というより演劇人だからじゃないかなあと、僕は思っているわけで、勝新のような華、というのは、確かに少しは劣るのかもしれん、しかしながら仲代には、磐石な基礎の上に築かれた確固としたオリジナリティがあって、まあそれは、勝新のような最初から輝きを華っていたってのではなくて、磨いて磨いて、ようやっとここまで輝くにいたったものであって、それはいわば、日本の伝統芸能の様式美に通じる美しさがあるわけなのですよ。仲代の、勝新や三船とは違った、真面目さ。それは、ある部分では、三船や勝新には、真似のできない精緻さがあってね、僕はそれは、やはり、映画的というよりも演劇的なのじゃないかと思うわけなのさ。
批判の多いこの作品、その多くは、戦闘シーンを見せずに、馬ののたくるシーンを見せたことによる批判がほとんど。だけれどね、昔は確かに黒澤のアクションにひとつの希少性があった。それは黒澤のようなアクションを取る人が少なかったから。でも影武者の作られた時代には、もう映画界にアクションなんてものはあふれてた。その中で、黒澤が戦闘シーンをふんだんに取り入れたところで、それは、どんなに黒澤の演出が抜きん出ていても、以前のインパクトをもって迎えられることはなかっただろうし、むしろ、それらの数多のアクションシーンと共に、芸術性さえも埋没させてしまう陳腐さが潜んでいることを黒澤は察知してたからこそ、黒澤は戦闘シーンを描くことを避けたのではないかと思う。今の時代はさらに、アクションシーンに個性を出すことが難しくなってきてるね。
ということで、この映画は素晴らしい映画であると共に、黒澤のとった選択(戦闘シーンを盛り込まない)も、間違ってはいなかったと僕は思います。

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