DVD ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2004/11/26 ¥2,625
1973年、弱冠15歳にして「ローリング・ストーン」誌の記者に抜擢され、あるロックバンドのツアーの同行記事を書くことになった少年ウィリアム。旅の中で知るミュージシャンたちとの友情、ジャーナリストとしての葛藤、そしてせつない初恋が当時のロックとともにつづられる佳作映画である。

監督・脚本は、トム・クルーズ主演『ザ・エージェント』のヒットで一躍表舞台に踊り出たキャメロン・クロウ。「波乱万丈な人生への穏やかなる賛歌」といった趣の作風は前作から継承しつつ、脚本家時代(ティーン・ムービーの先駆けである『初体験 リッジモンド・ハイ』などを手がけている)で得意とした青春もののみずみずしさも感じさせる、これまでの集大成といえる力の入った作品に仕上がった。それもそのはず、これは映画人であると同時にジャーナリストとしての顔ももつ彼の自伝的な作品なのだ。

基本設定はもちろん、ペニー・レインという少女の存在や、母親が彼の年齢を彼自身に偽っていたなどの細部に至るまで、ほとんどが事実に基づくものだという。それ故だろうか、主役から脇役に至るまで登場人物ひとりひとりが人間臭く、そして誰にも必ずひとつは見せ場があるのがなんとも心憎い。
少女にはロックという世界がすべての現実であり、ペニーレインという名前がそのロックの世界で彼女の本名だった。ロックは彼女の現実の生の隙間を埋める仮初の現実だった。
少年はロックを愛していたが、その世界を傍観する立場にいた。傍観できるものは批評できる。そこで少年はロックの世界にうもれている彼女をも傍観し、いつしか、彼女の心を理解する。その孤独を埋める場所を彼女はロックにあると信じるが、少年は、ロックの現実を知るうちに、ロックの理想との乖離も実感し、少女にロックの虚妄性ををわからせ、どうにか現実へと回帰させようとする。それは、少年が少女に抱く愛であると共に、ロックに対しての愛ゆえの批評でもあった。
少年は、ロックへの愛ゆえの歯がゆさをロックのメンバーぶつけ、ロックの意味を問う。
少女と、少年、表現は違えど、共に心からロックを愛していた。
少女の愛は盲目の愛であり、少年の愛は誠実の愛である。
ロック批評家になるなら、正直になれ。それはつまり、ロックを愛するなら、ロックの発展を願い、あえて鬼になる部分も持ち合わせろということなのだろう。

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