僕には列記とした父親がいる。

ただ、僕は母親に育てられた。
僕の成長に、父親が関与している割合は皆無に等しい。

父親は、仕事以外の人生をパチンコに捧げている。
家に帰るのはパチンコ屋が閉まってから。11時から12時。

食費やその他生活費を除くほとんどの小遣い、そして、ボーナスはパチンコに消える。

僕は父親に遊んでもらったという記憶がほとんどない。
父親はいつも家にいなかった。
パチンコに勝てば機嫌がよく、負ければ当り散らす。

思春期のころ、僕の反抗期は父親に向かった。
僕は父と一年話をしなかった。
父は自分の過ちでも僕が反抗すれば容赦なくびんたが飛んできた。

父は過去何度となく借金を作ってきた。
小学生のころ、僕のもらったお年玉をせびりにきたこともあった。
今もきっとどこかで借金を作ってる。
その金額がどのくらいなのか僕は知らない。

僕はこんな父親にはなるまいと誓った。
だから僕は、父親が吸うからタバコは吸わない。
パチンコやギャンブルはしない。
父親になったら、家事を率先してしようと思う。
子育ても当然だ。僕のような思いを僕の子供にはさせたくない。
決して、家族をないがしろにはしない。
父親から僕が学んだことがあるとすれば、すべて反面教師としてだった。

僕と父は、僕が反抗期のときに決定的な溝が出来た。
もう、生涯埋まることは無いと思う。

僕は祖父を知らない。しかし、話によると、酒飲みで、酒のせいで金を食いつぶし、家を三軒も潰したという。女を買い、酒を飲み、仕事にあぶれた。祖母や父は親戚の家に置かせてもらった。
祖母は働き、父や父の弟を養った。祖父は結局酒が元で若く死んだ。

祖母は言う、父もかわいそうな人なのだと。父もまた、父から愛情を受けることなく育ったのだ。
父にも、祖父の血が流れている。放蕩の血が。
祖父は酒で、父はパチンコ。

ふと、思う、父は、祖父を見て、自分はああなるまいと思わなかったのか?と。祖父の暴力から祖母を守る父の話を聞いたことがある。父は、きっと、思ったはずなんだ。ああなるまいと。
なのに、今、祖父と何ら変わりない父親となっている。
僕もなるのだろうか?
そんな放蕩の血が僕にも流れているのかと思うと恐くてたまらない。

僕は、この放蕩の血を終わらせたい。決して父のようにはなりたくない。

だけど、僕も大人になっていくにつれて、だんだんと父親の事がわかってきた。僕自身、子供にどう接していいかわからないとき、自分が父と重なる。僕も父同様に不器用なのだ。

父は酔うと、自分が好きかとしつこく聞いてくる。父親らしいことを何一つしてこなかった父。だがやはり子供から愛されたいのだ。
そして父も、僕ら子供を愛していないわけではないのだ。
愛し方がわからないだけなのだ。

僕は今、父をかわいそうな人なのだと思う。それは、軽蔑の意味ではない。不器用で、愛情をうまく表すことの出来ない人、パチンコにしか自分の居場所を見出せない人。父も脆く弱い一人の人間なのだと、僕は理解できるようになったんだ。

それは絶対的な権威であった親が、絶対的でなくなったということなんだろう。親の弱さを認めることは辛い。しかし、認めざるを得ない。それは僕が大人になったということなんだと思う。僕は、もう、親に守られる存在ではなく、親を守る存在へと成長してしまったんだ。

父は一方的ではあるが、僕を愛している。それを確信できる。
だからといって、僕と向かい合うことを避けた過去の罪が免れるわけではない。僕との溝は、やはり一生埋まらないだろう。
だけど、僕はそんな父を、過去の憎しみも含めて受け入れることができるようになった。父という存在を、一人の苦しむ不器用な人間として受け止めることができるようになった。
僕は、父を愛している。愛せるようになった。それは確かだ。たとえ溝は埋まらなくても、確かなことなんだ。

どんな存在でも父は父だ。父である限り、僕は父を愛する。
たとえどんなに憎んでも、見捨てない。

それが家族というものだ。

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