男子ハンマー投げ金メダリストのアヌシュの金メダル剥奪が決まった。

アヌシュがドーピングの再検査を拒んだためだ。開催前に摂取された尿が別人のものだったというのも決定的な証拠となった。同じコーチについてもらっていた男子円盤投げの金メダリストもドーピング検査に応じなかったため金を剥奪された。

今回オリンピックでドーピングに引っかかった選手は過去最多だったらしい。多くは元共産圏の選手だったそうだが、地元ギリシャの英雄も、その中に含まれていた。

なぜ危険を冒してまでドーピングを使うのか。それこそがオリンピックという大会の重さを表している。特にプロ競技ではない多くの競技は、オリンピックこそが、その成果の見せ場であり、人生の成功への足がかりである。名声、金、国の威信。特に共産圏の選手は、メダルを取るか取るか取らないかで将来の自分の待遇が天と地とも違ってくる。キューバの選手が金メダルを取れば、一等地の最高級のマンションでの生涯の生活が保証される。
こういった誘惑は、ものすごいものなのだろう。
そして、また、独裁国家、専制国家、北朝鮮のような国では、国家の威信を示すという重責が選手の肩に重くのしかかる。
現在の日本は、どちらかといえば自分の四年間の努力の成果という意味あいのほうが強いが、以前の日本、マラソンの円谷の自殺を思い起こしてほしい。国家の名誉という重責はかくもすさまじいのである。

アヌシュは、室伏とも私的に仲がよく、また人間的にもけして卑劣であるわけではないだろう。競技のときにきていた娘の写真入のティーシャツは、家族思いのよい夫であることを想像させる。
そんな男を、ドーピングへと走らせる。また平然と発言を詐称させる。
その先に人生の破綻の危険を予想できながらも、とどまることができないのだ。四年に一度の重みである。

ドーピングに走るものは、常に天国と地獄。振り子にはそのどちらかしかない。そして多くは場合、振り子は地獄で動きをやめる。

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