DVD ビデオメーカー 2002/12/20 ¥4,935
さて、レ・ミゼラブルを観てからというもの、僕は俄然ジョン・マルコヴィッチの虜である。彼の演技の一挙手一投足にまでも注目せずにいられない。彼の声はすばらしい個性をかもし出す。艶のある、魅力のあるその声は男の僕をも捕らえてはなさない。名優とはまさにこういう人物のことを言う。表情を変えずとも、その内面を表現しえる役者は、そういるものではない。彼の演技は、まさにそれなのである。この作品では脇役として、依頼する監督の役をこなしているが、その存在感は、やはり揺るぎないのだ。
監督のマノエル・デ・オリヴェイラが、本作を撮影したのは92歳。主人公は突然の交通事故で妻と娘夫婦を亡くしたベテラン俳優で、遺された孫との生活を軸に、彼の孤独な日常が淡々とつづられていく。すばらしい映画。淡々とした中に、老人の忍耐の苛烈さが徐々に浮き彫りになり、俳優としての演技にも支障をきたす。老いの切実さと、孤独のつらさ。一条の光としての孫が、涙を誘う。この愛らしさ。孫だけではなくこの年老いた俳優の愛らしさ。ついには疲れを吐露し、演技を中座し家路につく老人の人生に、老人の肩に僕はお疲れ様と、手を添えたいのだ。
プライドが高く、ギャラのいいドラマへの出演を拒む主人公だが、撮影の本番で台詞が出てこないなどシビアな現実が観る者の心に鋭く突き刺さる。人生の哀感をしみじみと伝えるのはもちろんだが、オリヴェイラの映画的手法には全く老いが感じられない。主人公が見つめる絵からショパンのワルツへの転換など、映像と音楽がたがいに呼吸を合わせているようだし、彼の心情を靴のアップで語らせる場面などが秀逸。カフェをはじめとしたパリの街並みも静かなたたずまいを見せ、映画の雰囲気にマッチしている。映画監督役ジョン・マルコヴィッチの、役柄をわきまえた控え目な演技も好感。
さて、レ・ミゼラブルを観てからというもの、僕は俄然ジョン・マルコヴィッチの虜である。彼の演技の一挙手一投足にまでも注目せずにいられない。彼の声はすばらしい個性をかもし出す。艶のある、魅力のあるその声は男の僕をも捕らえてはなさない。名優とはまさにこういう人物のことを言う。表情を変えずとも、その内面を表現しえる役者は、そういるものではない。彼の演技は、まさにそれなのである。この作品では脇役として、依頼する監督の役をこなしているが、その存在感は、やはり揺るぎないのだ。
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