DVD バンダイビジュアル 1999/05/25 ¥5,250
北野武の第3作は、前2作と打って変わって青春映画。主人公は聴覚障害者のカップル。ごみ収集車のアルバイトをする茂(真木蔵人)は、ごみ集積所で偶然サーフィンボードを拾ったことをきっかけに、すっかりサーフィンに熱中していた。彼の練習する砂浜には、彼を見守る聴覚障害者のガールフレンド貴子(大島弘子)の姿があり、茂はサーフィン大会に出場するほどに上達した。
ほとんどセリフのない作劇は、聴覚障害者を主人公にすることで成立した監督北野武の策士ぶりを遺憾なく発揮している。2人がそろって歩くシーンや、武らしいナンセンスなコメディ部分のユーモアに加え、茂が貴子の部屋の窓に小石をぶつけて呼び出すシーンのリリシズムなど、それまでの暴力の北野映画の定評を覆す作品だ。
かの故・淀川長治氏が武映画の中でもっとも賛辞を与えていた作品。その理由はサイレンとだから。そう、サイレント。主役の二人は一言も言葉を交わさず、映画全体としても驚くほど言葉というものを剥ぎ取ってる。それはいわば、武映画のもっとも原型ともいえるのだけど、他の作品と比べて、武臭がしないのは、もうひとつの武の特徴である暴力がほぼ皆無だからだろう。でも、やっぱり、このころの武の作品は、死の方向にベクトルが向いてるなあと思うわけであって。最後が唐突で、一瞬何が起きたのかわかんなかった。でも、画面を極力剥ぎ取っていくってのも、また武の特徴なのである。

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