ある人生

2004年4月18日 TV
NHKアーカイヴスを見る。
僕の、お気に入りの番組の一つだ。
「杖と六法全書」。
清貧の老弁護士の生き様を描いている。
法のもとでは、人間は平等であるべきだ、との信念を持つ彼は、弁護料をもらわない。ゆえに、彼の容貌、服装は、ぼろぼろである。しかし彼は一向気にする様子もない。
彼は、勉学に励んだが、それは立身出世を望んだからではない。純粋な興味と、人間に対する愛情から。
清貧を歩む彼の心は誰よりも富んでいる。命尽きるまで、人を救うがために東奔西走する彼の姿は、老いという衣服の下に壮年にも劣らぬ若い情熱を感じさせる。
飄々としたその後姿を見たラスト、ふと、言い知れぬ感動が僕を襲った。
彼にはたくさんの書生がいたが、誰一人として、弁護士になったものはいない。それは、師であるその老人の志に、弁護士としての自覚を自己に問わせたからだとしても、僕は残念でならない。
誰かひとりでも、彼の志を継ぐ勇気を持つものはいなかったものか。
彼の到達した場所が、彼のなしていたことがいかに困難を伴うことかの証左である。
弁護士としての正義を貫くことは、耐乏を強いる。
しかし清貧を貫くことで、彼は心の自由を得た。
であるからこそ彼は、ある種の人間の理想を具現しているといえるのではないか。

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