DVD ビデオメーカー 2003/02/28 ¥4,700
ジョヴァンニは、この作品によってようやく、父との完全な和解を、そして、過去を詫びることができたのである。悲しみが、偉大な作品を作り出す。悲しくも、美しい1つの事実である。
暗黒街に身を投じ、実際に11年の服役経験を持つジョゼ・ジョヴァンニの自伝的作品。賭博師の父・ジョーとの確執を抱えるマニュは、暗黒街に身を投じ、やがて見せしめの死刑を宣告されてしまった。ジョーは確執を越え、息子の命を救うために奔走する。有名な『穴』の原作脚本を手がけた、ジョゼ・ジョヴァンニが父にささげた映画ととるべきか。若い頃にできた溝は、長い年月をかけてお互い深く愛するにいたっても、関係を隔てる。くだらない矜持がゆえか、それとも、自分の過ちへの恥ずかしさからか。どんな思いが交差しようとも、家族である。父は、最初から我が子を愛す。子供は成長しようやくそのことに気づいていく。しかし、気づいた時には溝は修復できぬほどに深くなっている。それが、遠い過去となるほどに修正は難しいのか。なるほど、そのような苦悩は、ただの感傷に過ぎない。だが、それを認め、父の胸に飛び込む勇気がいかほどのものか、どんなに成熟した大人であっても、いや、大人であればあるほど、それは難しいことなのだ。そう、それはただの感傷に過ぎないが、美しい感傷だ。偉大な苦悩なのだ。そのもどかしさゆえ、父と子の間系はドラマとなりうるのだ。
ジョヴァンニは、この作品によってようやく、父との完全な和解を、そして、過去を詫びることができたのである。悲しみが、偉大な作品を作り出す。悲しくも、美しい1つの事実である。
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