DVD バンダイビジュアル 2003/02/25 ¥4,800
30年前に、表舞台から姿を消した伝説の大女優・藤原千代子。インタビューに答えて、自らの生い立ち、そして秘められた恋を話しはじめた彼女だが、その実体験と、出演した映画のシーンがいつしか混ざり合う…。前作とは打って変わって、笑いとノスタルジーの交差するドラマ。映画好きであればあるほどこの作品に好感を持つんじゃないだろうか。いろんな作品のオマージュと思しきシーンがアニメならではの表現によってにやりとさせつつも、監督自身の個性もまた強烈にかもし出すことに成功している。少々わかりにくいところや、急展開と思われるところもなきにしもあらずだが、総合的にはやはりかなりな良作とみてよいと思う。最後のせりふが賛否わかれるところじゃけど、僕はさして違和感なかったよ。だって彼女は女優だもん。自分の人生もドラマにしちゃうのさ。
『PERFECT BLUE』で気を吐いた今敏監督の、劇場用長編第2作。『PERFECT〜』は現実と妄想が交錯するサイコスリラーだったが、同様の枠組みをよりポジティブ、かつ、切ない方向に昇華させたのが本作だと言える。
戦前、戦後を通じて活躍した女優の一代記に、時代劇や怪獣映画、SF映画などのシーンが目まぐるしく絡み、時空を越えた恋物語に、観客もいやおうなしに巻き込まれる。そのここちよい酩酊感! 90分という上映時間が終わっても、もう少しその中にいたかったと思えるほどだ。
何よりノスタルジアをかきたてられる時代考証が見事。平沢進(元P-MODEL)による音楽も印象的にシーンを盛り上げる。スピルバーグ率いるアメリカのメジャー配給会社「ドリームワークス」が世界配給を決定したのも納得の傑作だ。
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