過去の清算(6)

2004年1月13日 連載
享楽への耽溺はすなわち苦悩からの逃避でしかない。問題がまだ存在しているのなら、同じ事態が出来した時には再び人生という道の障壁となるのである。
僕はようやく障壁に対峙することを決意する。しかしながら最初のそれは無謀なる邁進であった。現状を検証することのなく、未知なる場所に飛びこむことは、成功をなせば称揚される。が、しかし、方法を持たざるしてなされる解決は偶然の産物でしかない。ひとたび失敗を招けば、克己という美名の仮面を剥ぎ取り、自分の力量を顧みないがゆえに招いた愚行という姿がそこに現れる。
つまり僕は人間を信じることのないままに、人間関係の修復を試みる。その舞台には、スポーツ店の接客のバイトという場を設えた。
人間不信。その根本を修正せずして行ったこの試みは、そこここで綻びを大きくする。人間を信じることのできない僕が、どんなに愛想を拵えようとも、その不自然さは拭いさられず、人間関係に水を差す。そしてまた、善悪道徳強迫が、言葉巧みに客を購買へと導く行為に水を差した。程なく僕は、1つの大きな失策を契機に強迫を悪化させ、逃げるようにバイトを去る。そしてこの経験は、自分の弱さを自覚させると共に、責任放棄に対する、罪悪感が自己への情けなさ、歯痒さと共に身を、心を蝕んだ。
問題を解決しようにも、僕は方法を知らなかった。方法を知る方法すらも知らなかったのだ。僕は再び苦悩する。今度は問題から逃避したいがためにではなく、問題にどう立ちむかえばいいのかで苦悩した。
ストレスからであろうか、バイトを去るのと期を同じくして、僕の顔一面にアトピーが現出し、眉毛は抜け落ち、僕の心身をさらに衰弱せしめたのである。その苦しさは、久しく感じていなかった「死」を意識せしめた。

しかしながら僕はその危機を脱する。ある人の一言によって。
人生の決定的な転機といえる瞬間があるならば、僕にとってこの人物との出会いにしくはない。

続く

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