このようにして、僕の中には2つの相反する想念。人は、裏切るものであるという思いと、人を傷つけてはならない、という思いとが共存することになる。心が、いかに複雑なるものであるか、この相反すると思われる想念が、矛盾を含みつつも存在し得る場所なのである。だからこそ、人はジレンマに陥る。葛藤し、逡巡するのだ。
しかし、僕がその時持ったこの2つの想念は、一見矛盾しているようで、その実、二律背反性を帯びていた。人間を信用しないのも、傷つけることに細心を払うことも、いずれは、僕に人間との接触から遠ざける点に於いては、むしろ同じベクトルを向いて僕を前進せしめた。僕は、心を閉ざした。
僕は、高校生活を捨てた。あと半年である、大学において、自分は生まれ変わる。今振り返れば、それは絶望ではない。なぜなら、僕は生まれ変われるという理想を夢見ることができたから。卒業すれば、そして大分を出て、彼等との関係を絶てば、過去を忘れることが出きると思えていたから。絶望とは、前に光輝が見えなくなる時をいうのなら、僕はまだ、自分にも、人間にも理想を失ってはいなかったといえるのかもしれない。
しかしながら、その頃の僕は、絶望であった。絶望と、思いこんでいた。大学を早く決めてしまい、彼等の顔を見ないことだけを考え、彼らという頚木から開放されること、それが自由だと信じて。大学は、そのような理由で決めた。センター模試の結果による推薦で、最も早く合否が決定された大学。僕はそこに決めただけだ。ただ、その大学がたまたまテニスが強かったのは、選択理由の口実となった。大学が決まり、僕は高校にいかなくなった。

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