☆あなたが素晴らしいのは 愛されようとするときでなく あなたが素晴らしいのは ただ、愛そうとするとき☆

楽しみに録画していた、NHKアーカイヴスの

「響きあう父と子〜大江健三郎と息子光の30年」

を観る。息子の光さんは、障害を抱えている(自閉症かな?)。大江健三郎は、光さんをこの世に宿してから、小説化としても、家族としても、すべてが光さん中心の生活になった。そんななかで光さんが何を得、どのように成長していったかの記録である。

驚いたのは、大江氏が書斎を居間に置いていることだ。そしてその横には光さんがいて,つづきの台所には奥さんがいる。大江氏が家族というものをどのようにとらえているのかが、この居間の書斎からわかったような気がした。

光さんは幼い頃どの言葉にも反応することがなかった。そんな中で、唯一鳥の鳴き声に興味を示した。大江氏はありとあらゆる鳥の鳴き声のレコードを集め、光さんに聞かせた。そして、大江氏は光さんの音への執着に、可能性をかけた。大江氏は毎朝光さんにラジオのクラシック音楽の放送を聞かせた。

現在の光さんは、作曲家として花開き、耳目を集めている。

僕は大江健三郎の小説を恥ずかしながら読んだことがない。だから、小説家としての大江氏のことはわからないが、父親としての大江氏は、僕にとっては満点に近い、理想の父親像にうつった。

そしてもうひとつ僕がこの番組から得たこととして、自閉症の人も、健常者と同様の感情を持っている、それが外には見えづらいだけだ。ということだ。
大江氏は、長いこと光さんには悲しみという感情がないのではないかと考えていた。そんな時、広島の原爆記念行事で、光さんに作曲依頼が来る。最初、光さんは想像で、原爆の曲の作曲をする。そしてその後、大江氏は光さんを広島原爆資料館に連れていった。光さんは曲を書きなおした。そこには喜びから、悲しみへとうつりゆく感情が美しい旋律となって表れていた。光さんにも悲しみという感情がある。

思えば至極当たり前のことなのだろうが、その当たり前のことが、どうして大江氏を、そして僕をここまで驚かせることができたのだろう?

自分の中に巣くっている無意識の固定観念というものが露呈した一瞬である。僕にとってかけがえのない一瞬である。

大江氏の作品を読んでみよう、僕にそう思わせた番組だった。

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