さて、メジャーリーグのスラッガーとして名を馳せたマーク・マグワイア。

彼の体は最初からあんなに大きかったわけではない。すべてはウエイト・トレーニングの賜物である。
彼は、大学時代からウエイトを始めたが、それは試行錯誤の始まりを意味していた。
そのころの彼の体を見たことがあるが、引退前の頃の体と比べれば、マッチ棒といっていいほどに細かった。

彼はこう述べている、
「これまで試行錯誤で学んできたことが、大学時代にわかっていたらよかったと思う。つまり、ウエイト・トレーニングによって、野球のプレーを向上させることができるということだ」。

では、彼は具体的にどのようなトレーニングを試行錯誤の上、生み出したのか。
彼は、基本的にオンシーズンも、オフシーズンもトレーニングをする(サミー・ソーサはオンシーズンはしない)が、主に筋力をアップさせるのはオフシーズンであるので、オフシーズンのワークアウトを取り上げる。

マグワイアは通常、3日オン、1日オフのスケジュールで、次のようなスプリットを用いることが多い。

〇1日目:上腕二頭筋、前腕、上腕三頭筋
〇2日目:胸、背中
〇3日目:脚、肩

<プログラム例1>
上腕二頭筋 ・ダンベル・カール
       (2〜4セット 8〜15レップ)
      ・プリーチャー・カール
       (2〜4セット 8〜15レップ)
前腕    ・リバース・カール
       (2セット 15〜25レップ)
      ・リストカール
       (2セット 15〜25レップ)
上腕三頭筋 ・トライセップス・プレスダウン
       (2〜4セット 8〜15レップ)
      ・ダンベル・エクステンション
       (2〜4セット 8〜15レップ)

<プログラム2>
胸     ・ハンマー・チェスト(フラット)
       (2〜4セット 8〜15レップ)
      ・ハンマーチェスト(インクライン)
       (2〜4セット 8〜15レップ)
背中    ・ワイドグリップ・ラットプルダウン
       (2〜4セット 8〜15レップ)
      ・ベントオーバー・ロウ
       (2〜4セット 8〜15レップ)

<プログラム3>
脚     ・レッグ・エクステンション
       (2〜4セット 8〜15レップ)
      ・レッグ・カール
       (2〜4セット 8〜15レップ)
肩     ・ラテラル・レイズ
       (2〜4セット 8〜15レップ)
※なお、セット数、レップ数はワークアウトによって上記の範囲で変化させている

マグワイアは定期的にルーティンを変えるので、上記あげたのは、彼の数多くのプログラムの中の一例に過ぎない。

これに加え彼はオフ・シーズンには45分のエアロビック・トレーニングを毎日行っている。

このプログラムを見れば、ウエイトトレーニングがただ漫然と鍛えているだけではないことがわかってもらえるはずだ。

筋肉をつけるには、まずは筋繊維を壊さなければならない。骨折すると、その個所は前より太く再生するが、筋肉もしかるべき休息を与えれば、ちぎれた筋繊維はより太く再生される。
これを超回復という。筋肉の回復には約24〜48時間、あるいはそれ以上の時間を要する。

ここで注目してほしいのは、筋肉は部分としてわかれているという事だ。つまり、肩の筋肉を休息させている間は、他の部分の筋肉を鍛えればよいわけだ。

マグワイアの上記のルーティンも、あれに1日のオフを加え、筋肉の一部分に3日間の間隔をあけている。こうやって筋肉は超回復を繰り返し、筋力をアップさせていくのである。

しかし、この知識がないままに、筋トレをするとどうなるか。
たとえば1日で全身を鍛え、それを毎日続ける。

恐ろしいことである。筋肉は超回復をする暇がなく、壊れていくばかり。筋肉がつくどころか、体自身に変調をきたす事になりかねない。
これをオーバートレーニングという。何日たっても倦怠感や疲労感が抜けず、食欲もないという状態になる可能性があるのだ。

ここまでの説明で、日本のしごき式鍛錬の危険性をわかってもらえただろうか?

筋肉の知識のないままトレーニングをすれば、成果をあげるどころか選手生命を潰しかねないのだ。巨人の星などもってのほかである。

マグワイアのトレーニングでさらに瞠目すべきなのは、彼はトレーナーに頼らず、自分でプログラムを組んでいるという点だ。これは他のメジャーリーガーにも多く当てはまるだろうが。

日本の選手はたとえトレーニングをしているにしろ、トレーナーにまかせっきりの人が多いように思われる。
トレーナーはあくまで助言者であり、自分の筋肉のことを一番わかっているのは自分であるということを肝に銘じておいてほしい。自分の筋肉のことを熟知することが筋力の向上、ひいては技術の向上には欠かせないからだ。

次回も引き続き、他のメジャーリーガーのトレーニングも紹介しながら、日本の野球を例に、僕が思う日本のスポーツ界の改善点を挙げていきたい。

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